私と愛犬ポピィの介護生活の基本は、主に次のようなものでした。

①目が見えない&耳が聞こえないことで不自由しないようにサポートすること。

②必要な薬を飲ませて、腎臓サポートフードだけを食べさせること。

③体調を崩さないように、苦しまないように健康管理を手伝ってあげること。


やってみると意外にかんたんだったことや、上手くいったこと、逆にとても難しかったこともありました。

①目が見えない&耳が聞こえないことで不自由しないようにサポートすること。

見えない・聞こえないとはどういうことなのか想像力を働かせて、こちらがしっかりと理解してあげれば、必要なことは自ずと見えてきます。

「生活環境の見直し」「愛犬との接し方の見直し」など、愛犬のために必要だと思うことをするだけで、後は愛犬自身が順応してゆきました。いろいろなアイデアや工夫が必要でしたが、上手くやれたように思います。

②必要な薬を飲ませて、腎臓サポートフードだけを食べさせること。

薬は「腎機能を補うための薬」と「脳と神経の老化による全身症状を改善する薬」を毎日飲む必要がありました。

たくさんの薬を飲ませるようになった初めのうちは、口の中が粉だらけになるのを嫌がり苦しそうにしていましたが、すぐに「薬を飲むと元気でいられる」ということに気が付いたようで、途中からは自分で口を開けて上手に薬を飲むようになりました。

腎臓サポートフードもとても美味しいらしく、喜んで食べ続けました。ほかの食べ物を欲しがることもなく、「好きなものを食べられない」という悩ましいストレスも感じていなかったはずです。

③体調を崩さないように、苦しまないように健康管理を手伝ってあげること。

これが一番難しく、大切なことでした。一度悪くなった腎臓は治りません。そして、悪い症状が出ないようにと薬と専用食で誤魔化している間も、腎機能の低下は進行します。その進行速度に耐えられない時に、下痢をしたり、嘔吐したり、食事ができなくなるなど、体調を崩しました。これに持ち堪えると、また元気に暮らせる日々が続きましたが、半年に一度くらいの頻度で体調を崩して、その度に愛犬ポピィは痩せ細っていきました。

どんどん痩せていく過程で、「無理に食べさせないこと」と「頑張って食べさせること」の両方が必要でした。

腎機能が低下しているということは、ろ過できる血液や老廃物が少ないということなので、腎不全に起因する悪い症状を出さないためには、腎臓が処理できる量を超えない範囲で食べさせなければなりません。そのため、体調を崩して痩せこけてしまったからと、それを取り戻すためにたくさん食べさせることはできませんでした。また、体調が悪いときや食欲が無いときは、愛犬自ら絶食したり食べる量を調節していました。

しかし、絶食や栄養不足が続けば衰弱してしまうため、あまりに絶食が続いた時には、少しだけでも食べさせる必要がありました。そんな時、ごはんを口元に運んであげると、初めは食べようとしませんでしたが、しばらくすると思い出したかのようにガツガツと食べて、それをきっかけに食欲を取り戻し、また元気になるということが何度もありました。「一口でいいから、食べてみたら?」というアプローチが必要なこともあるのだとわかりました。それで本当に食べられない状態なら、無理に食べることは無いはずです。

ただ、以前より少食になって痩せてゆくことは悪いことばかりではありませんでした。筋肉や脂肪を蓄えたふっくらとした体を維持するには、たくさん食べなければなりませんが、痩せて軽くなった体を維持するのは少量の食事で十分だったからです。衰えた腎臓が処理できるだけの最小限の食事で生きてゆく必要があったので、食べる量が減ったことも、体が痩せて小さくなったことも、どちらも理にかなっていたのでした。ガリガリに痩せて骨が浮き出た姿は痛々しく見えることもありましたが、本人はむしろ身軽さを感じていたようで、散歩でどんどんたくさん歩くようになっていきました。

苦しまないように

目が見えず耳も聞こえないという暗闇と無音の世界で、腎不全による体調不良や苦しみを感じるということが不憫でかわいそうでしかたなかったです。そんな不安や苦しみを少しでも遠ざけて、元気に生きられる時間の割合を長く保つことに尽力していたつもりです。

老いに倒れて立てなくなったり、死のふちを彷徨ったことが何度もありましたが、最後まで強く生きてくれて、寝たきりになったりはしなかったのは幸いでした。

介護生活の拡充

介護が必要な愛犬のためにできることは、たくさんあります。必要だと思うことは何でもやってきましたが、その中でさらに気が付くことや、新たな対策が必要なことなども出てきます。

たとえば、これは「トイレ」の例。

体調には波があり、ぐったりとしている時にはトイレのために起き上がることができず、寝床でおもらしということもありました。また、トイレに行こうと寝床から出てきても、寝床からトイレまでの途中で排泄することが多くなってきました。トイレがもっと近いほうがいいということです。

しかしこの時点で再び生活拠点を変更するのは難がありました。そこで私は、寝床とトイレの間にもペットシーツを敷き詰めて、寝床からトイレまでの途中で排泄しても良いようにしました。愛犬ポピィもそれをいいことに、安心してトイレの手前で排泄するようになりました。

最終的にはいつどこで排泄してしまっても問題が無いように、愛犬の行動範囲(約5畳)の床全体をペットシーツで埋め尽くすという大胆な方法をとりました。これにより見た目は少々見苦しくなりましたが、排泄物で家や愛犬の体が汚れる心配からずいぶん開放されました。

このように、毎日の介護生活の中で気が付くことや、「こうしたほうがもっと良い」ということはたくさんあって、その度に改善してゆくことで、愛犬の暮らしがより良いものになってゆくのだと思います。
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一緒に乗り越える

はじめは、愛犬ポピィが病に倒れたことも、この介護生活も、とても悲しいものだと思っていました。長生きして、最後まで元気でいてくれるものだと勝手に信じていたから。

何より、視力・聴力を失って、愛犬が私の姿や声を認識できなくなったことは辛いことでした。犬と人とのコミュニケーションは本来、声や音とアイコンタクトで行うものだから、そのすべて失ったことは大きな変化でした。それは互いの関係においてとても大きな障壁に感じられました。

目が見えない、音が聞こえない、そのうえ難しい病と闘ってゆかなくてはならないなんて、それはまるで悲劇や試練のように思えました。

けれど私と愛犬ポピィは、この境遇を受け入れて、上手く対応してゆくことができました。

すべてを乗り越えた後には、互いの間には目には見えない「信頼」というものだけが確かに残っていました。

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